(文字通り「夜の帳」が下りつつある宮古島の海)
海は特別な力をもっています。人の心を落ち着かせ、思考をシャープにします。
その力は昼よりも夕方以降の方が感じやすいです。昼は暑い上に、波の散乱光が強すぎるせいかもしれません。そのため、私が海辺を散歩したり、ジョギングを始めるのは日が落ちる頃です。
この不思議な力に、私は幾度となく救われてきました。大変な症例を抱えて、暗い気持ちで海を訪れる時ですら、ガラリと心境がかわるのです。
「ここまでは仕方ない。悪化させないための戦略を立てよう」
海を離れるときには、今後の方針が定まり、覚悟も決まるのです。
島の病院ではいつも一人です。本土のように相談相手がいなければ、本島へ搬送できる症例も限られます。それでも海が私にヒントを与え、力を存分に引き出してくれたのです。